4年ぶり「蝶トンボ」舞う

 4年前の2016年7月頃には、日本庭園の池では沢山の蝶トンボを見ることができたが、その後、2、3年はこの池で蝶トンボの姿を見ることがなかった。ところが今年になって、日本庭園の池で蝶トンボが舞っているのを見つけた。

 蝶トンボはトンボの1種である。翅は青紫色で付け根から先端部にかけて黒く、強い金属光沢をもつのが特徴である。前翅は細長く、後翅は幅広い。腹部は細くて短い。腹長は20~25mm程度である。蝶のようにひらひらと飛ぶので蝶トンボと呼ばれるようになった。

 蝶トンボの幼虫の大きさは13~15mmあり、産卵してから5~10日ほどで孵化して、幼虫でいる期間は1年ほどである。生息地は、浮遊植物などが生えている池沼に多い。幼虫の餌は土にいる微生物でオタマジャクシなども食べる。従って、水の中のさらに土の中に潜っていることが多い。水温に敏感で、水温が上がりすぎても下がりすぎても死んでしまう。

 蝶トンボは、高度な自然環境でしか生ききれないため、汚い水で孵化してしまうと成虫になる前に息絶えてしまうと言われている。きれいな池沼が求めらる。

 今年の7月の気温は昨年までの気温と比較すると、長梅雨のため低かった。この気温の影響で今年は日本庭園の池に蝶トンボが見られるようになっているのかも知れない。しかし、蝶トンボは準絶滅危惧種に指定されている地域もあり、池沼が次々に埋められていくと絶滅の危機になる。少なくとも、田舎ではまだ生存条件があるが、都市開発のために池沼の埋め立てが進む都会では全滅するであろう。さらに、これからは地球温暖化の影響を受けて気温が高くなる傾向を考えると、蝶トンボも将来見られなくなる昆虫になる恐れがある。せめて、日本庭園の池の環境が蝶トンボの生育を満たすものであって欲しい。

カイツブリの雛の生育

 カイツブリは全長が25~29cm、翼開長40~45cm、尾羽は非常に短く、翼の色彩は黒褐色、足は身体の後部の尻のあたりから生えており、歩くにはバランスが悪いが、足を櫂のように使って水中に潜って泳ぐことができる。主に水上で生活しているため歩くことはほとんどないが、泳ぐ時はカエルの後ろ足のように足を使う。魚類、昆虫、甲殻類、貝類などを食べる。潜水して獲物を捕食する。1回の潜水時間は15秒程度で、最高で水深2m程度まで潜ることができ、水中で秒速2mの速さで泳ぐことができる。

 ここ、3、4年の間、毎年夏に日本庭園の池で雛が生まれるイベントが拝見できた。7月の初め頃、雌雄の2羽で、ハスのような水生植物や杭、岩などに植物の葉や茎を組み合わせて円錐状の巣を作り、4~5個の卵を雌雄で交互に抱卵し、3週間程度で孵化し、雛が生まれる。卵は白色であるが、次第に汚れて褐色に変わる。親鳥が巣から離れるときは、天敵カラスなどから守るために卵を巣材で隠してから離れる。離れてからも巣から一定の距離で常に巣を監視することを行う。カラスの鳴き声が聞こえると、潜行して巣の近くに近寄る動作は親鳥としての役割を実行しているのだろうか。

 孵化後は1週間程度で巣からでるようになる。小さいうちは親鳥が背中に乗せて保温や外敵からの保護を行う。雛を背中に乗せて池の中央に出かけ、泳ぎや潜水、餌の採り方なとを親鳥から訓練される。親鳥は雛を背中に乗せた状態で潜水することもできる。カイツブリはトンボを好物にするが、水上を飛んでいるトンボや岩に止まっているトンボの捕獲テクニックの訓練も行っている。岩に止まっているトンボの捕獲の際に潜航艇のように水中を潜ってトンボに近づき巧みに捕獲する様は見ていて楽しくなる。雛は孵化後2ヶ月ほどで巣離れし、1年ほどで成熟する。親鳥は雛鳥が生きていくために必要な手段をこの短期間に訓練し、一定期間で強制的に独立を促す行為は本能的なものかも知れないが素晴らしい習性である。親離れ、子離れ、育児放棄、児童虐待、過保護などが問題になる最近の人間社会の親子のあり方の問題と関連付けて考えさせられるものがある。

 今年は、8月中旬に4羽の雛が生まれた。2羽の親鳥と4羽の雛鳥が日本庭園の池に「生のドラマ」を展開してくれる。雌の親鳥が4羽の雛鳥を背中に乗せて、天敵カラスの襲撃から雛を守り、潜行訓練や餌の確保技術などのトレーニングを行う池の中央に出向く。1羽の雄鳥は周辺から雛の食べ物を採取し、4羽の雛鳥に逐次与えていく。2、3週間余り、このようなトレーニングを繰り返しているうちに雛鳥は潜行したり、自らトンボを捕獲したりできるようになり、逐次、雛鳥だけで単独行動も行うようになる。雛鳥が行動する周辺で親鳥がそれとなく監視している光景は、池を訪れる観客を楽しませてくれる。時たま、カラスの鳴き声が聞こえると、親鳥の監視の目が鋭くなり、時には自分の羽の中に雛鳥を隠す処理を行うこともある。6羽の親子の水鳥が池の中で行っている行動を見ていると、人と同じような親子の絆をカイツブリという水鳥の家族の中に感じることができる。しかし、この光景も9月後半になると、雛の巣立ちともに見られなくなると思うと今から寂しさを感じる。

 孵化後1週間の2羽の親鳥と4羽の雛鳥の生の一瞬を捉えた映像を次のページ「話題考察」で視聴できる。庭園の池の真ん中で、潜行や獲物捕獲を訓練している瞬間瞬間の動作の中に、水鳥の親子の絆を感じ取ることができる映像である。小型カメラの望遠を使用した収録のため、動画の揺れが生じ、可能な限り除去したが、後期高齢者の技量ではどうすることもできない領域がある。許されたし。

サギソウは準絶滅危惧種

 サギソウは、唇弁の開いた様子が白鷺が翼を広げた姿に似ていることから名付けられたと言われている。茎は短立して高く伸び15~50cm程度に伸びる。先端近くに1~3輪の白い花をつける。花の径は3cmぐらいで、7~8月に花を咲かせる。唇弁は大きく、深く3列し、中裂片は披針形、両側の側裂片は斜扇形で側方に開き出てその縁が裂けている。

 サギソウは日当たりのよい平地や湿地に自生する。地下には太い根が少数つき、根によく似た地下茎が数本伸び、その先端が芋状に肥大してその部分が年を越し、翌年その球根から地下茎を出す。茎の下部に3~4枚の根出葉がつき、その上部に少数の鱗片葉がつく。

 最近では、サギソウが好む湿地環境が土地の開発で壊され、「準絶滅危惧種」に指定されるようになっている。サギソウは世田谷区の区の花に指定されている。昔、世田谷区に大規模なサギソウの自生地が存在したためである。

 サギソウの花言葉は、「清純」「繊細」「夢でもあなたを想う」である。世田谷には、サギソウに絡んだ昔話がある。吉良頼康の側室「常磐姫」が悪い噂で追放され、身重で逃亡し、自害して潔白を証明しようといて、飼っていた白鷺の足に遺書をくくりつけて飛ばしたが、途中で白鷺は力尽きて死んでしまう。その白鷺が多摩川のほとりでサギソウになったという話である。

ウラシマソウは絶滅危惧種

 ウラシマソウは、2015年4月にこもれびの丘の雑木林で見つけて以来、公園では見ることができなくなっている。以前から、ウラシマソウは絶滅危惧種に指定されている山野草である。ウラシマソウは葉の下に、肉穂花序と呼ばれる穂のような花をつけるが、その先端の姿が浦島太郎が持っていた釣り竿の糸と似ていることから、このように呼ばれるようになったと言われている。花は、仏炎苞と呼ばれる黒褐色か、赤褐色、緑白色の苞に包まれている。
 草丈は、30~80cm程度で、開花期は4月から5月で、地下に里芋に似た大きな球根があり、春になると芽を伸ばす。ウラシマソウは性転換する植物として知られており、力のない株は雄花、力のある株は雌花になると言われている。生育の状態によって、毎年、雄花をつけるか、雌花をつけるか変わってくる。
秋頃には、トウモロコシを縮小したような真っ赤な実をつける。美しい姿を見せるが、ウラシマソウの実にはサポニンという毒が含まれており、食べると激しい嘔吐や激痛に襲われる。
 ウラシマソウの花言葉は、不在の友を想う、懐古、回想などといわれている。ウラシマソウの種類は、南国に自生するナンゴクウラシマソウ、小型のウラシマソウであるヒメウラシマソウ、茎のまだら模様がマムシに似ていることからつけたマムシグサ、肉穂花序の先端が雪のように白く、餅のように丸いことから名付けられたユキモチソウ、大型種でありボクシングのグローブのような形をしたムサシアブミなど、数種類のものがある。

 最近、絶滅危惧種、準絶滅危惧種が増加しつつある傾向が気になる。